Working with Paper

私は自然界における人間の存在をテーマに制作をしている。

無限の時の流れと共に、自然のサイクルは絶え間なく繰り返される。

― 雄大な自然の中、人間の存在はその一部にすぎない ―

 私は紙を素材に制作をしている。
楮、雁皮、三椏に代表される木の繊維を原料に、各地に伝承される高度な技術により繊細かつ強靭な和紙が作られてきた歴史がある。和紙は光を通した瞬間、その美しさが際立つ。この特質は古くから日本人の暮らし、居住空間に生かされてきた。

 

 私は西洋の美術・現代美術に影響を受け、ヨーロッパの美術学校に学んだ。
様々な素材を模索してゆくうち、紙と自然素材を使う表現にたどり着いた。以来、私の手により作品の肌となってゆく素材感覚を大切に使い続けている。和紙に限らず日本、ヨーロッパ、アジア、行く先々で手に入る様々な紙、繊維、再生紙を使い制作をする。
帰国後、楮・三椏の産地である徳島を活動の拠点とし、和紙とその原料を使い平面・立体作品、インスタレーション、様々な制作を試み、素材の持つ魅力に惹きこまれていった。

 

 長い旅の末、日本の伝統と結びついた表現に出会った。

 

 私は人間の原始感覚を呼びさますような、素朴で強いかたちが好きだ。
 作品が、光と影により新たな空間を作り出す瞬間にはいつも驚きがある。

 紙は限りない可能性を秘めた素材だ。

 

―“現代美術の手法・和紙のかたち展”(練馬区美術館 / 1999年)テキストより抜粋―

 


 

“和紙のかたち展”より20年余りが経過し,自然環境の変化は加速度を増してゆくばかりだ。

人間社会が自然界に与えた影響はあまりにも大きい。

そしてこの2020年はchaosの1年となった。

-雄大な自然の中、我々人間の存在はその一部にしか過ぎない-

 

 

-私たちはどこから来て、どこに向かっているのだろう?-

近年、私の原風景にある山々を描き始めた。

絵は私の心を、見る人の心を映し出す。

山々の向こうには何が見えるのか?

 

山の彼方より光のさす未来を願い

私は制作を続けてゆく。

Reiko Nireki / Dec. 2020</P