私の出会った人達
楡木令子
時はほんとうに、いつも同じ速さで流れているのだろうか?
もしもそうならば、私のこの1年は、時のはざまにこぼれ落ちたまま
過ぎていったのかもしれない。
2度とない、あの風の吹き抜けるオーネ・マノクロザスと
私の出会った人達の作り出した時間、空間。
そして、2度ともどらない1999年の夏。
私はどうやってあそこにたどり着き、数十枚の絵を仕上げ、
空間を作ることが出来たのか、もう思い出せない。
ただいつも、私を励まし、ささえてくれた人がいた事だけ覚えている。
イギリス最南端の島、ポートランドの石切り場で、私がたった1人で
石を彫っていた時、出会った人がいた。
その人は、共に歩んできたこの道を急ぎ足で逝った。
私にいつも後姿を見せながら・・・
アーティストとしての生き様を見せながら・・・
私は彼からたくさんのものをもらった。
私は今この道を、私の時を刻みながら進む。
私のArtを通して、もっとたくさんの人達と出会いたい。
そして、私のArtを通して、本当の自分と出会ってゆきたいから。
I special thank you to Koshiro,Kaho SASAGE,
Yoko OTABE,
Motoi OKUMURA
and
Hiroshi MIKAMI
19 March 2000, Reiko Nireki Mikami
楡木令子さんの出会った人達
楡木さんは自身の作品を‘人間という器’だと話す。
内に秘められた魂や精神と、それを包み込む肉体。
彼女は自分が出会い、あい対してきた人々の姿を、
‘器’というかたちにおき直しながら制作を続ける。
(常に人の内面へと眼差しを注ぎ込むことを惜しまずに)
それは一人一人の人間にとって
自分が引いてきた時間やそれに関わる全てのものを
つぶさに見つめ包含して行くことであり、
その持続が表現者としての楡木さんのテーマヘとつながった。
― Beyond the History
今回の展覧会で発表されたドローイングは、
人々のシルエノトであり、そして群像であった。
日本からイギリスヘ、ドイツヘ、インドヘ、
彼女が歩み続けてきた足音であるかのようなその作品は、
O-NEという家屋の中で足を休めた。
周囲の山々の景色と重なりながら、
南北に流れる夏の風を受けては、ざわめき、動き出しそうな
表情を見せる。
それはここに集まった人々の次なる場所への移動の準備でもあり、
彼らと出会ってきた楡木さん自身のまた新しい旅の始まりにも
似ている。
捧 公志朗(オーネ・マクロザス オルガナイザー)
オーネ・マノクロザス/埼玉/1999年
和紙に木炭、パステル
撮影/奥村 基